長崎出島にある長崎最古とも言われる「日新ビル」。建物のレトロな佇まいと前を走る路面電車の姿が相まってこの場所だけ昭和の時代にタイムスリップしたような場所です。
今回は「日新ビル」で版画家の田川憲アートギャラリー「Soubi’56(そうび)」を経営している、実のお孫さんの田川俊(たかし)さんと奥様で店主の由紀さんにギャラリーと田川憲氏のお話をお伺いしました。
お話の中で氏の中国上海での活動記録もお伺い出来ましたので、こちらは「田川憲氏の中国上海での足取り」の記事として改めてご紹介します。
この記事の目次
・長崎を代表し上海日僑版画界の第一人者だった「田川憲」とは
・田川憲の想いが詰まったギャラリー立ち上げまで道のり
・ギャラリーを通じて始まった交流の輪
・長崎お土産に。田川憲の版画を使ったコラボ商品や書籍類
・田川憲アートギャラリー「Soubi’56」さん店舗データ
長崎を代表し上海日僑版画界の第一人者だった「田川憲」とは
田川憲 本名は田川憲一(1906-1967)。長崎を代表する版画家。1940年に田川憲と号する。長崎市立商業高校卒。画家を志し上京。版画家の恩地考四郎に会い版画に惹かれる。
「自画自刻自摺(浮世絵と違い、自身で下絵、彫り、摺りを全て行う創作版画の手法) 」を取り入れ、長崎の歴史ある文化や景観の版画作品や手記を数多く発表。
1938-1940年、1941-1945年の2回、中国に従軍画家として赴く。
中国では従軍画家以外に自身の創作活動、日本人と中国人の版画家の架け橋として尽力し「上海版画協会」の設立、「上海版画研究所」の設立に関わり、内山完造と「中国木刻作者協会」の創立に協力。上海日僑版画界の第一人者と言われた。
田川憲の想いが詰まったギャラリー立ち上げまで道のり
ギャラリーを立ち上げたキッカケは親戚が所有していた田川憲の作品を田川憲のファンでもあった田川俊さんご自身が譲り受けた所から始まったそうです。
親戚を説得し作品を譲り受けた後、タイミングよく長崎県美術館より2017年で没後50年となる田川憲の作品展示の相談を受け貸し出しすることに。
そんな話の流れの中で常時作品を展示するスペースを作ろうと決意し2018年1月にギャラリー「Soubi’56」をオープン。
「日新ビル」を選んだ理由も「路面電車が走る周辺の雰囲気」、「作品に登場する残すべき長崎らしさ」がマッチする場所だったとの事。確かにギャラリーを訪れる前から当時の世界に没入できそうな街並みです。
ご夫婦の話によると「ギャラリーと言っても小さいスペース。美術館や大きいギャラリーでは出来ない作品の発信方法はないか?」と考え“一つの作品と関連する手記の展示”に行き着いたそうです。
展示する作品の数を絞る代わりに、田川憲自身が残した版画と手記を元に「変わりゆく長崎の景色をどうして作品に残したのか」。
氏の言葉と考えに耳を傾けてもらい、作品を作り上げるまでの歴史的な背景や意味を深く理解できるギャラリーを目指したそうです。(展示品は2ヶ月に一度交換)
また小さいギャラリーだからこそ、店主の田川由紀さんとの距離も近く作品のお話を伺えるのも魅力の一つだと思います。
ギャラリーを通じて始まった交流の輪
ギャラリーを始めてSNSでの発信やメディアでの紹介などもあり、より多くの人に田川憲の魅力が伝わっているのを肌で感じるそうで、長崎県内の地元民はもちろん県外や海外在住の田川憲ファンが長崎観光や帰省に併せて訪れてくれるだとか。
驚いたのは田川憲を知らなかった若い世代の人たちにも作品に興味をもってもらえた、と嬉しそうに話して下さいました。
また展示後の作品は、長崎市内のお付き合いのあるカフェに出張されて作品展示と紹介、「居留地さるく(※)」と銘打ち、版画に残した居留地を実際に巡る活動なども不定期ながら行っているそうです。
※”さるく”とは長崎弁で「歩く/歩き回る」の意味。
今回お話を聞きながら感じたのは、田川憲の作品の素晴らしさもですが、作品を守り愛して発信の場を作った田川ご夫婦の人柄が相まって、県内外の協力者やファンの輪が広がっているのだろうなと感じた点でした。
長崎お土産に。田川憲の版画を使ったコラボ商品や書籍類
Soubi’56さんでは残念ながら作品の販売はしていませんが作品を使ったポストカードやシール、カレンダーなどのオリジナルグッズを販売されています。
また営業日が金・土・日のため平日に長崎にお越しの観光客の方にはギャラリー以外で田川憲のアイテムが購入できる場所がありますので、そちらをご紹介したいと思います。
Soubi’56さんとのコラボ製品や書籍類もあるので、取り扱い店舗やネットで購入をしてみてはどうでしょうか?
長崎市内で購入できるコラボ製品
梅月堂の「南蛮おるごおる」
長崎人に愛される銘菓「南蛮おるごおる」のパッケージデザインに採用。サクッと美味しいクッキーです。
梅月堂のサイト
ママン・ガトー(ノスドール)の各種商品
「窯焼き熟成缶ケーキまるごとグリーンレモン」「阿蘭陀せんぺい」「ケーク・オ・フィグ」パッケージデザインに採用されています。
ママン・ガトーのサイト
ホテルニュータンダの「長崎居留地洋食シリーズ」
レトルト食品のパッケージデザインに採用。6種類あるポストカードのいずれか1種類が同封されています。
ECサイト
カステラ元祖「松翁軒」の紙袋デザイン
商品を購入すると入れてくれる紙袋のデザインに採用されています。
松翁軒のサイト
セレクト雑貨ショップ「ノボリクダリ」の「おんちゃまTシャツ」やポストカード
中島川沿いにある「ノボリクダリ」では「おんちゃまTシャツ」のデザインに採用。Soubi’56さんでも取り扱うポストカードやシールも販売しています。
ノボリクダリのFB
各種書籍類
長崎の歴史書などに作品や手記が採用されています。
下妻みどり著「ながさき開港450年めぐり」
ブライアン・バークガフニ 著「写真でたどる旧グラバー住宅の歴史」
季刊誌 樂(らく)ra-ku 48号(2020)「長崎が奏でる音」
その他
JR九州ふたつ星の「長崎スフレ」のカップ用スリーブ
予約を取るのが難しいJR九州ふたつ星の中で食べられる、「長崎スフレ」のカップ用スリーブに採用されています。
Soubi’56ネットショップ
Soubi’56さん自身もネットショップを立ち上げたばかりで、カレンダーのみの取り扱いとの事ですが今後はアイテム類を徐々に増やしていく計画のようです。
長崎出島のアートギャラリーsoubi’56のまとめ
長崎出島にある素敵なギャラリー「Soubi’56」さんの紹介でした。実際に田川憲の作品を観たことがない方、既にファンの方もドシドシお立ち寄りください。
ギャラリーの周辺をお散歩するだけでも、ノスタルジックな長崎の街並みを気に入ってくれると思います。
田川憲アートギャラリー「Soubi’56」さん店舗データ
【Soubi’56(そうび’ ごじゅうろく)】
住所:〒850-0862長崎市出島町10-15日新ビル106
電話:095-895-7818
開館時間:11:00~18:00
金・土・日のみOPEN(イベント参加のため休館の場合もあり)
※作品自体の販売はありません。作品を使ったオリジナルのポストカード、ブックカバーなど販売。
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