長崎県民が愛してやまない「皿うどん」。みなさんはちゃんぽん麺派ですか?細いパリパリ麺派でしょうか?私はやっぱりパリパリ派。その理由は癖になるあのバリバリ食感。

今回は「皿うどん」の発祥について調査してみました。パリパリ麺の歴史、起源や由来、本場中国ではルーツとなる食べ方があるのか?残った麺のアレンジした使い方など紹介したいと思います。

まずはおさらい「皿うどん」の歴史

「ちゃんぽん」と「皿うどん」を長崎で初めて作った方は「四海樓」を創業した福建省出身の華僑である陳平順氏と言われています。長崎の華僑の方は福建省出身が多く、長崎が福建省福州市と友好都市を締結しているのも、この辺が関係しているのだと思われます。

四海樓さんのサイトには分かりやすく「ちゃんぽんの由来」と「皿うどんの由来」が紹介されています。

「皿うどん」の由来を一部抜粋すると「皿うどんのルーツは『炒肉絲麺(ちゃあにいしいめん)』である。炒肉絲麺はスープがなく、今でいう焼きそばのようなものである。ちゃんぽんのバリエーションとして創ったもの」と紹介。

少し情報を付け足すと中国で言うと「炒肉絲麺」は「炒麺」の一種。「炒麺」は「焼きそば」で、「炒肉絲麺」は「細切り肉の焼きそば」的な存在。「炒麺」にも肉は入っているものの、更に肉増しした感じが「炒肉絲麺」です。

また「炒肉絲麺(ちゃあにいしいめん)」の呼び方は恐らく「福建語」。

「福建語」は細かく言えば「閩北話」、「閩南話」、「閩東話」、「閩中話」、「莆仙話」の5つに分かれ、陳平順氏の出身地が分からないため、5つの内のどれかの呼び方と推測されます。

ちなみに普通語だと「ちゃおろうすーみぇん(chao rou si mian)」となり、普通語と福建語の音の違いがお分かりになるかと思います。

気になっていた皿うどんのパリパリ麺の謎

個人的に長年不思議だったのは「皿うどん」にどうして2種類の麺があるのか?という点でした。

「皿うどん」には「ちゃんぽん」と同じ「ちゃんぽん麺」と「パリパリの揚げ麺」の2種類があります。

四海樓さんのサイトでは元々は陳平順氏が華僑や留学生のために考案した「ちゃんぽん」で使われた麺を「皿うどん」に使い、極細の麺を油で揚げて同様の具にとろみをつけてかけた一品が「炒麺(ちゃーめん)」で「皿うどん」とは別モノとして紹介されています。

この辺は推測が入るのですが上海の場合、先に紹介した「炒肉絲麺」と「炒麺」は「焼きそば」の仲間なのですが、福建省だと「炒肉絲麺」は太麺の焼きそば、「炒麺」は細麺の焼きそば等の細かい分類分けがあるのかも知れません。

また場合によっては「肉絲炒麺」とも呼ばれます。

何れにしても福建版の「ちゃんぽん」や「皿うどん」の原型の食べ物を日本で作ろうとして、日本で手に入る具材を使い日本風にアレンジしたのは至極当然の流れだと思うのですが、そもそも長崎にパリパリの揚げ麺文化があったのか?どうしてパリパリ麺が使われ定番化したのか?が謎でした。

福建省で発見したパリパリ麺のルーツ

上海では「炒肉絲麺」的な「焼きそば」はあるものの、基本的には「太麺」を使います。また上海では「かた焼きそば」的な麺は極稀に見かけるものの、細いパリパリ揚げ麺文化は私が知る限りありません。

そこで福建料理の「炒麺」はパリパリ麺を使っていたのか?と思い、あれこれ調べてみたのですが、通常の太麺やビーフンを使った料理はあるものの、中々パリパリ麺の情報が見つからず。そこで発想を変えて「揚げ麺」があるのか?調べてみることに。

本場福建省で発見したパリパリ麺

調べると見つかったのです!「皿うどん」に無くてはならない、「パリパリ揚げ麺」が福建省に。それがこちら。
中国のパリパリ揚げ麺。炸線麺

中国語で「炸线面(zha xian mian)ぢゃーしぇんみぇん」と呼ばれ、日本語の漢字に変換すると「炸線麺」と呼ばれる麺製品。
※パッケージの漢字は現在使われている簡体字ではありません。

中国語で「炸」は「揚げる」の意味、「线」には「糸」や「線」の意味があるため、「炸线面」は「揚げた糸のような麺」と言う意味になります。見た目も意味も皿うどんのパリパリ揚げ麺のルーツでは?と断定できそう。ようやく見つけたのです、皿うどんのルーツの麺を!!

いやいや本当にパリパリ食感の麺なのか?そして現地ではどのような食べ方をしているのか?念には念を、と言う事で調査を継続してみることに。

長崎とは違った本場のパリパリ麺の調理方法

お取り寄せした「炸線麺」の封を開けて麺を確認したところ、ガッツリとパリパリ食感。いい感じです。パリパリ麺にも通常の細めと極細がありますが、本場で購入した麺は極細タイプでした。
新発見?長崎名物パリパリ細麺の皿うどんの起源やルーツを追ってみた

そして「炸線麺」の調理方法を調べると!!・・・実は現地での調理方法は少しばかり違っていました。

「炸線麺」を使った麺料理は「炒炸線麺」や「福建炸線麺」、「海鮮炸線麺」「厦門(アモイ) 炸線麺」などの地域によりそれぞれの呼び名があり、福建では定番の麺料理のようです。

また「炒炸線麺」を「短縮して「炒麺」と名前が変わった」、「現地では短縮して「炒麺」と呼んでいる」可能性も十分に考えられます。

本場のパリパリ麺の2種類の調理法

そして何れの料理も完成した麺の状態は”しっとり”に仕上がっているのです。調理法を調べると2種類の方法が存在していました。

①麺を煮込む

具材を炒め調味料とお湯を入れて煮立てたあとに「炸線麺」を投入し煮込む。調理法は、ちゃんぽんを作るような工程です。

①お湯を注いで柔らかくする

温かいお湯を準備して5分ほど浸し麺を柔らかくした後に、炒めた具材と和えて炒める。なんともインスタントラーメン的な使い方です。

この2つが本場の使い方。販売元での食し方の紹介でも基本はこの2つの方法。現地ではパリパリ麺をそのまま使う料理を発見することが出来ませんでした。※ご存じの方はご一報ください!

そうなのです。故郷である福建省ではそのままのパリパリ麺にあんかけ具材を載せて食べるのではなく、具材と麺をしっかり炒めて麺を食材となじませて使うのが基本路線のようなのです。

なぜ揚げ麺が存在しているのか?

それでは何故、揚げているのか?と言うと、炸線麺の袋に記載があったのですが保存は120日と書かれており、油で揚げている本来の狙いは、保存食としての意味合いがあるようなのです。

なんだかチキンラーメンが誕生した背景は、この辺がルーツなのかも知れません。

しかし福建省の調理法を知り改めて気がついた事が。

出前した「皿うどん」の残りを次の日に食べると餡によって”パリパリ麺がしなしな”になって美味いと個人的に思っていたのですが、福建省の調理方法から考えてもあながち正しい食べ方なのかも?という点でした。

余ったパリパリの皿うどん麺のアレンジ方法

皿うどんのパリパリ麺が余ったらサラダに加えて食感のアクセントに用いたりしますが、今回の調査を終えて、本場の福建省と同じようにお湯で戻して、焼きそば的な使い方も当然あり、という事が判明しました。

パリパリ麺が余って使い方に困った時はお湯に浸して柔らかくしてから、焼きそば的に炒めて食す。この方法もチャレンジしてみてはどうでしょう?

皿うどんのパリパリ麺を本場中国で調べてみた!記事のまとめ

今回の調査で行き着いた結論(推測込み)は以下となります。

結論①

私が福建省での食べ方を探せなかった可能性がある。探せばパリパリ麺にあんかけを使った皿うどんの原型が見つかるかもしれない。

結論②

日本に持ち込んだ時に本場と同じ調理法だと手間がかかるので調理方法を変えて提供した。お湯で戻す手間がかかったので、そのまま使っちゃえ!と調理方法を変えた可能性があるのかも。

結論③

本場と同じ調理方法をしていたが、パリパリ麺をそのまま使った方が日本人のウケが良く、今のパリパリ麺での提供が始まった。

個人的には②か③の何れかでは?と思っています。

いずれにしてもパリパリ揚げ麺が本場の福建省にも存在していたので、長崎でもパリパリ揚げ麺を使ったチャーメン(皿うどん)が登場した可能性が高く、本場の調理方法と長崎での調理方法はどうやら違うようだ、という結論に行き着きました。

長崎に元々、細麺を油で揚げたパリパリ麺の文化があった訳ではなく、福建省由来なのだと思われます。

陳平順氏は日本にしかない食材を使い日本風にアレンジを加えつつ、本場福建省のオリジナル麺を日本に浸透させる工夫をしたのではないでしょうか。

※実際は諸説あるかも知れませんので、この説が100%正しい!という事では無いのを付け加えておきます。調べられる範囲の結果による考察です。

それでは最後に。

折角なので購入した「炸線麺」を使って皿うどんを作ってみました。皿いっぱいの揚げ麺に餡を投下!
中国の炸線麺で作った皿うどん

見た目は間違いなく、皿うどんです。そして味もパリパリ食感で間違いなく皿うどん!

福建省の「炸線麺」を使って皿うどんを作った長崎人は、もしかすると私が初?かも知れません。ごちそうさまでした!

リピート購入したくなる食感、味わいです。これで金蝶ソースがあれば、間違いなし。何にしても美味けりゃいいんです。

また1つ長崎と中国のルーツを紐解くことが出来ました。

※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。