「長崎くんち」名前は聞いたことがあるけど「正直なところ実はよく分からない。」そんな県外の方も多いのではないでしょうか。また長崎人に誘われて「長崎くんち」を見に来たが、誘ってくれた長崎人がびっくりするくらい、おくんちに夢中で質問ができなかった。
長崎人には当たり前でも、県外の人には、さっぱり分からない。「長崎くんち」の謎や疑問点があるのではないでしょうか。そんな「長崎くんち」の知識についてご紹介。
この記事の目次
・そもそも「長崎くんち」って何ですか?
・「長崎くんち」の「くんち」の由来って何ですか?
・「くんち」「おくんち」「長崎くんち」「長崎おくんち」どれが正しいんですか?
・長崎県民あげて「くんち」盛り上がっているんですね!
・なるほど長崎市民が一丸となっているんですね!
・初めての「くんち」スゴイ!ところで龍踊りはいつ頃の登場ですか?
・やらしい話、演者って幾ら出演料もらっているんです?
・えっ!プロじゃ無いんですか?どうして奉納踊があんなに上手く踊れるんですか?
・奉納踊り前に演者が何か投げていますが、アレってなんですか?
・取れなかった・・・「まきもの」ってどんな品なんですか?
・長崎くんちって3日間しか楽しめないんですか?
・演者ってプロじゃないんですよね。庭見せや奉納踊りの時って仕事は?学校は?
・気に入った!飛び入りで演者に参加するぞ!どうすりゃいいの?
・飛び入り参加は出来ない!?うーん、なんとかならんの?
・それじゃー長崎市民だと、誰でも参加できるんですか?
・7日の朝に長崎でテレビを観たら、各テレビ局でくんちテレビジャック放送。今年は何か違うんですか?
・7日の朝の奉納踊りで白いハッピを着た人が世話していました。あの人達は何者?
・踊りの前にデカイ提灯のような丸い緞帳が現れました。アレなんですか?
・奉納踊の後に観客が必死に叫んでますが、なんて言ってるんですか?
・日差しが強いので日傘をさしていたら「しろどっぽ」がこっちを指差し怒っています。どうして?
そもそも「長崎くんち」って何ですか?
長崎にある諏訪神社の秋のお祭り。諏訪神社の神様に対して執り行われる龍踊りやコッコデショなどの奉納踊が有名です。
奉納踊りの座席を設営中の諏訪神社
江戸時代の寛永11年(1634年)から続くお祭りで、毎年10月7日から9日までの3日間が「長崎くんち」の祭事期間です。奉納踊りは国指定重要無形民俗文化財に指定されている、長崎を代表するお祭りの一つです。
「長崎くんち」の「くんち」の由来って何ですか?
諸説あるようですが「9日(くにち)」が訛って「くんち」になったと言われています。
「くんち」「おくんち」「長崎くんち」「長崎おくんち」どれが正しいんですか?
長崎人は自分にあった呼び方をしています。厳密に言えば「長崎くんち」かと思いますが、どれも正しいと思います。
神様に対して失礼の無いよう「お」を付けて「おくんち」と呼ぶ長崎人、長崎の地域に複数ある「おくんち」と判別しやすくするため「長崎」を付け「長崎くんち」と呼んだりと、人によって様々です。アナタが気に入った呼びやすい言い方をしてください。
長崎県民あげて「くんち」盛り上がっているんですね!
基本的に「長崎県民」ではなく「長崎市民」が熱狂するお祭りです。長崎市以外で「長崎くんち」の話をしても、長崎県民は意外と詳しく知らない事もあるのでご注意を。
なるほど長崎市民が一丸となっているんですね!
水を差すようですが意外とそうではありません。「長崎くんち」以外に長崎市内には「大浦くんち」「住吉くんち」など、他の地域でも「おくんち」が存在しています。
また「長崎くんち」は長崎中心地で始まった背景があるので、市内から徐々に離れると、熱量も徐々に下火になる傾向があります。
なお「おくんち」は、宗教弾圧から生まれた祭事と言われており、その一面からも信仰の深い方からすれば気持ちよく楽しめないという意見もあるようです。
なので、良かれと思って長崎人と会話のキッカケ作りに「長崎くんち」を出せば盛り上がるという訳でありません。見極めが意外と大切、ご注意を。
シャッター閉じてNGアピール
初めての「くんち」スゴイ!ところで龍踊りはいつ頃の登場ですか?
「龍踊り」残念ながら登場しない年もあります。県外人から多く質問を受ける「長崎くんちあるある」です。
ポスターやイベントで登場する「龍踊り」のイメージが強く、「長崎くんち=龍踊り」と県外人は思いがちですが、「龍踊り」は毎年必ず奉納踊りをしていません。
よっ!有名龍
それでも「特別出演」という事でかなりの頻度で奉納踊をしているのも事実です。見られなかった?来年、出演するかも?また長崎に来るしかないですね!!
ちなみに読み方は「龍踊り(じゃおどり)」です。「りゅうおどり」ではないので、お間違いの無いように。間違えると長崎人から突っ込まれてしまいますよ。
やらしい話、演者って幾ら出演料もらっているんです?
一円ももらっていません。「踊り町(おどりちょう)」と呼ばれる奉納踊りを担当するエリアの地域住民に限って言えばボランティアとして集まり、無償で出演しています。どちらかと言えば着物代などは自腹!そこまでして長崎人は参加しています。
えっ!プロじゃ無いんですか?どうして奉納踊があんなに上手く踊れるんですか?
参加者の方たちは、奉納踊を奉納する10月7日から9日までの3日間を目標に6月頃から「小屋入り(こやいり)」と呼ばれる基礎体力作りなどの練習や稽古を開始して、本番当日に望んでいます。
担ぎ手を選抜のため一般公募を行い書類審査や体力試験をする踊り町もあるくらいです。
奉納踊り前に演者が何か投げていますが、アレってなんですか?
「まきもの」と呼ばれる引出物です。演者は「まきもの」を投げる。観覧者は縁起物の「まきもの」を必死に取り合っています。観覧者のまきもの争奪戦、かなり目が血走っています。
取れなかった・・・「まきもの」ってどんな品なんですか?
踊り町によって違いますが各踊り町の嗜好が施されています。ただ「まきもの」で一番喜ばれ各踊り町が準備しているのが「手ぬぐい」です。
席がよければ大漁大漁
「手ぬぐい」以外に配られる品は、長崎に縁のあるお菓子や食べ物があります。私は「長崎物語」と呼ばれる、ロール菓子や鯉の形をした蒲鉾を取った事があります。
THIS IS かんぼこ
長崎人は手ぬぐいが欲しい。しかし手ぬぐいは軽いので遠くに飛ばない。手ぬぐい欲しさに出来る限りいい席に座りたい、立ち上がって取りたいとジレンマと戦っている長崎人も意外と多いと思います。
気を利かせた演者は重量のあるお菓子などを手ぬぐいに包んで投げる演者、想定外の場所から飛んできた「不意打ち まきもの」が頭にあたっている観客も見かけます。
長崎くんちって3日間しか楽しめないんですか?
本来のメインである「奉納踊り」は10月7日からの3日間ですが、実はそれ以外の期間も楽しめます。
「庭見せ(にわみせ)」
各踊り町が奉納踊の準備が整ったことを、地元地域の方にお知らせする「庭見せ(にわみせ)」が10月3日夕刻から。
「阿蘭陀船の庭見せ(にわみせ)」の風景
「人数揃い(にいぞろい)」
各踊り町が本番のスタイルで地元の人にお披露目する「人数揃い(にいぞろい)」が10月4日の日中に行われます。これは長崎市内の街中で普通に行われるので、見に行くことが可能です。
「人数揃い(にいぞろい)」の風景
また数ヶ月前から始まる奉納踊の練習を訪れるのもいいでしょう。本番衣装で無いものの、踊り町が作ったお揃いのTシャツを着込んで練習する姿は、県外の人からするとレアな風景かも知れません。この練習は長崎の街中で夕方以降に行われています。
なお各踊り町が使う一部の曳物や「傘鉾(かさぼこ)」は、グラバー園内にある「長崎伝統芸能館」で見ることが可能です。グラバー園に訪問した際は足を伸ばしてみるといいかも知れません。
グラバー園の第一ゲート近くにある「長崎伝統芸能館」
以上、奉納踊りが行われる3日間以外でも楽しめる「長崎くんち」の一面でした。
演者ってプロじゃないんですよね。庭見せや奉納踊りの時って仕事は?学校は?
奉納踊りに参加する関係者一同、おくんち期間は、仕事も学校もお休みします。それどころではないのです。
小学校の頃に教師が「えーっ、MくんとSくんは、おくんちでお休みです」と生徒にお知らせするのは、長崎市内の学校では、ごく当たり前の風景です。
お店のシャッターに「10月7日より9日まで臨時休暇します」なんて、張り紙を見かけることもあります。
気に入った!飛び入りで演者に参加するぞ!どうすりゃいいの?
飛び入り参加はNGです。各地域に関係する市民が半年近くかけて、本番のために準備をしているお祭りです。気に入った踊り町について回って、写真などお撮りください。
飛び入り参加は出来ない!?うーん、なんとかならんの?
一つだけ方法があります。長崎市民として移住して、翌年の踊り町へ関係者に熱意を伝えて頂けると、参加の道が開ける可能性も。
仕事の都合で長崎を離れ、練習期間は毎日福岡から長崎に通って準備を行い本番を迎えた演者もいます。骨折したけど出演した、そんな演者もいたりします。
それじゃー長崎市民だと、誰でも参加できるんですか?
コレが意外とできません。奉納踊を受け持つ「踊り町」は長崎市内でもごく限られた中心地が請け負うため「踊り町」に関係がある人材が基本的に参加します。
今は長崎市民の人口流出の影響から担ぎ手が集まらず、担ぎ手募集も多くなっていますが、基本的には関係者が中心となっているお祭りです。長崎県の人口流出問題が、おくんちにも影響しているのです。
7日の朝に長崎でテレビを観たら、各テレビ局でくんちテレビジャック放送。今年は何か違うんですか?
長崎のいつもの日常です。長崎は毎年10月7日の朝は各テレビ局がおくんち生放送を行います。視聴率は合計すると80%とか越えているんじゃないでしょうか。。。
各局長崎に縁のある芸能人や長崎出身の芸能人、長崎郷土史に詳しい先生をお呼びして解説をしています。
「長崎くんち」は、どうしても座席の都合上、現場で観られない長崎人も意外と多く、そんな長崎人はテレビにかじりついて、おくんちを視聴しています。
またテレビ中継を演者の友人知人が録画して、おくんちが終わった後に自分や子供が映ってないかとチェックしたり、県外に住む長崎出身者にDVDを送ったりと、観たくても生で観られない人達にとってテレビ中継は有り難い存在なのです。こんな所も長崎人のくんち熱が伝わる点かも知れません。
ちなみに、夕方から今年のおんちダイジェスト的な番組もあります。
7日の朝の奉納踊りで白いハッピを着た人が世話していました。あの人達は何者?
「しろどっぽ」と呼ばれるお世話役の方たちです。声出し練習、奉納踊に関するマナー、奉納踊りが終わった後の「モッテコイの声掛け」など、踊り町の進行が円滑に進むよう、踊り町が気持ちよく踊れるよう、踊り町を出来る限り帰さないようにして、奉納踊りどうにか長く踊らせるよう、アレコレと対応してくれる方たちです。
踊りの前にデカイ提灯のような丸い緞帳が現れました。アレなんですか?
「傘鉾(かさぼこ)」と呼ばれる踊り町の先頭に立って、踊り町を案内する係の方たちです。各踊り町で笠鉾のフォルムや飾りが違うので、笠鉾ファンも非常に多いです。
大黒町の傘鉾
興善町の傘鉾
奉納踊の後に観客が必死に叫んでますが、なんて言ってるんですか?
基本的によく言われる用語は「もってこい!」「所望(しょもう)やれ!」「よいやー」です。
「もってこい!」「所望やれ!」は、奉納踊が終わった際に「アンコール」を意味する用語です。龍踊りや川船、コッコデショなどの「曳物」の時には「もってこい」を、本踊りなど「踊り」の時は「所望やれ」を使います。
もってくるけん、待っとかんね
所望したけん、観てくれんね※写真は実際の所望の踊りではありません
連呼していると奉納踊が踊り場に戻って、再び奉納踊を始めると、観客は「キャーッ!」と割れんばかりの声援と拍手喝采となります
「よいやー」は「傘鉾」や「曳物」が踊り場を所狭しと、ぐるぐると回転している際に「キャー素敵♪」「かっこいい」的な要素で言う用語です。※本来は「ヤッタ」という意味のようです。
その他には傘鉾がグルグル回り始めると出てくる「ふとーまわれ(長崎弁:大きく回れ)」や、「よかー(長崎弁:いいぞ)」等の用語があり、一年間ふつふつと溜め込んだフラストレーションを、腹から声を出すことで一気に吐き出す長崎人も多いかも知れません。
日差しが強いので日傘をさしていたら「しろどっぽ」がこっちを指差し怒っています。どうして?
「長崎くんち」は奉納踊りです。諏訪神社の神様に対して奉納される踊りであるので、神様の下で観ている観客が日傘、帽子を被る行為は神様に対して失礼に当たる行為とみなされます。
神様プンプン!らしいのです。諏訪の神様は心が広く「気にせんちゃ、よかー」と、そんなに怒っていないかも知れませんが、「神事です」失礼な行為になるのでNG。
ギリギリOKとみなされているのは、「まきもの」の手ぬぐいを頭に巻く行為。しっかり手ぬぐいをゲットして巻きましょう。
終わりに
と、他にも色々な「おくんち」ルールや知識が存在するのですが、基本的にはワイワイ楽しんで貰えれば、長崎市民も諏訪の神様も喜んで嬉しいのです。
他にも色々なサイトで「長崎くんち」について、熱のこもった記事が多くありますので、興味を持った長崎県外の方、調べてみてはどうでしょうか?